クライスラー・イプシロン
クライスラーの小型車は,今までも色々と乗ってきました。
ミシガンやネオンなどです。(小型って言っても結構大きいですけど…)(汗)
ミシガンはさすがにちゃんとした写真がありませんでした。
当時のクライスラーの経営危機を救ったと言われるほど爆発的に売れた車で,フォードの社長→クライスラーの社長という凄い経歴のリー・アイアコッカの命で開発されたKカー(日本の軽とは関係ありません。)という共通プラットフォームを使って作られた車です。
本当はミシガンはダッジブランドで,クライスラーブランドはエリーズという車名でしたが,日本ではクライスラー・ミシガンとして売られました。
2200㏄の直4エンジンで,日本車をだいぶ研究して開発したみたいですが,フルサイズセダンをそのまま小さくしたみたいなデザインと作りで,アメ車好きにはたまりませんでしたが,案の定,日本ではほとんど売れませんでした。
アメリカでは大衆車として売っていた車を,日本では高級車として売ったんですから,いくらリヤシートのヘッドレストなど日本で無理やり付けたりしても,ユーザーはそこまで馬鹿ではなかったということですね。
なかなかやるじゃん!日本人!(笑)
…で,少し時代が経って,ネオンというクライスラー車が輸入されました。
「日本車キラー」と銘打って売り出した車で,この車もアメリカでは10,000ドルという値段の安さからそこそこ売れましたが,日本ではやっぱり不人気車でした。
2000㏄の直4エンジンは繊細さに欠け,やっぱりアメリカのメーカーは小排気量車は苦手なんだなぁと思わせる車でしたが,トヨタが売ったキャバリエと同じで,私はこういう変な車大好きなので,当時乗っていました!(笑)
(※キャバリエについては,「アメ車はなぜ売れなくなったのか?」をご覧ください。)
当時付き合っていたポルシェのディーラーが,クライスラーもやってて,在庫があるから安く乗りませんか?と営業マンから声をかけられたっていうのもありますが…。
今回のイプシロンは,これら以前の小型クライスラー車とは全く趣が異なります。
写真をご覧になっていただいて分かるように,本当の小型車です。(笑)
排気量は900㏄です。(正式には875㏄)
排気量を聞いてピンときた方もおられると思いますが,その通り!,この車はフィアット500(チンクチェント)のツインエアと同じエンジンとプラットフォームを使用して作られた車なんです。
皆さん良くご存知のこの車です。
ルパン三世が乗ってて有名になった昔の500(NUOVA500,実は500としては2代目だって知ってました?)のデザインを生かして作られた現代版500(3代目500)です。
日本でも人気車種ですね。
なぜクライスラーがフィアットの小型車を?と思った方もおられるかもしれませんが,なんと今や,クライスラーはフィアットの子会社なのです!
会社の正式名称は,フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)です。
ちょっと前までダイムラークライスラーという社名で,ベンツと同じ会社だったのにねぇ。
アメリカのビッグスリーの一角をなしていたクライスラーも,あっちこっちに身売りしなければならず,事実上倒産して現在のフィアット傘下に至っているという訳です。
しかも,フィアット500はフォードKa(2代目)と共同開発なんですよ!
なんだか,ややこしいですね。(笑)
前置きが長くなりました。(汗)
イプシロンは,日本とイギリスではクライスラー・イプシロンとして売りましたが,その他のヨーロッパ各国ではランチア・イプシロンです。
ランチアのディーラーがないからという理由らしいですが,この決定が,少なくても日本では失敗でしたね。
ランチアブランドで売っていれば,もっと売れたと思うんですが…。
ついでに左ハンドルでマニュアルミッションなら,エンスーな方々が涙を流して喜びましたよ!(笑)
ちなみに,イプシロンはアメリカでは売ってません。
車屋さんなのに「アメリカ車」として売ってる店がありますが,この車のこと全然知らないで良く売ってるなぁ…と思っちゃいますね。(笑)
そういう店では買わない方がよろしいかと…。
ところで,ランチアというメーカーは,ある程度の年齢の方はご存知だと思いますが,最近の若い人は知らないんですってねぇ?
スーパーカー世代の方は,ランチア・ストラトスに憧れたかもしれません。
ストラトスは,ハンドリングがクイック過ぎて,普通に公道で乗るのは危険な車でした。
私は幼いころ,写真のAlitaliaラリー仕様のラジコンカーを持ってましたよ。(笑)(京商製,1/12スケール)
ランチア・デルタ・HF・インテグラーレ・エボルツィオーネなんて車もありました。(名前長っ!)
デルタもラリーカーを公道で乗れるっていうんで,日本でも超人気車でした。
乗るとボディゆるゆるで,なんじゃこりゃ?って感じの車なんですが,雰囲気はバッチリでした!
ランチア・テーマ8.32は,ファミリーカーのセダンボディにフェラーリのエンジン積んだ化け物でしたね。
リヤにスポイラーが付くのと,マフラーと8.32のエンブレムとタイヤホイールくらいしか違いがなくて,でもエンジンをかけるとV8エンジンの甲高いフェラーリサウンドが響いて,ただものではない…という羊の皮を被った狼的な迫力満点な車でした。当時オーナーに聞いたら,フェラーリと同じで,乗ってる時間よりも工場に入ってる時間の方が長かったみたいですが…。(爆)
どれも懐かしいランチア車です。(おやじは昔を懐かしがる…)(笑)
ランチアはフィアットグループになって久しいですが,昔のラリーカーのイメージから変わって,その後,フィアットの中でも高級な路線を得意とする部門になりました。
フィアットとランチアのブランド格差や価格差を知っている世代の方々にとっては,ランチアは特別な思い入れのあるブランドだと思います。
…で,実はイプシロンは今回のモデルで3代目なんですが,初代も2代目も小さな高級車を謳っています。
初代と2代目は正規輸入はされませんでしたが,ガレージイタリヤが輸入していたので日本にも結構入っていて,お洒落なエンスーが乗るマニアックな車でした。
こちらが初代イプシロンです。
徳大寺さんも乗っていて色んな所で紹介していたので,写真くらいは見たことある人も多いのではないでしょうか?
このアクの強いデザインは記憶に残りますよね。
2代目イプシロンは,こんなスリークでお洒落な車になりました。
2代目は,3代目に通じるデザインですね。(特にリアは3代目と同じ雰囲気です。)
初代のアクのあるデザインが好きだった人にとっては,ちょっと大人しくなっちゃったって感じですが…。
で,どうですか?この型は。
顔がコアラっぽい?(笑)
クライスラーのエンブレムが付いているのは,フロントとリヤとホイールとステアリングとリモコンキーです。
これらをランチアに替えて,ランチア仕様にして乗っている方もいますね。
なんせ,日本とイギリス以外は全てランチアですので,e-bayなどでパーツを取り寄せれば,あっという間にランチア仕様になります。
ガレージイタリヤが並行輸入でマニュアルミッションの車を輸入したりしてましたが,そちらは最初からランチアになります。
ランチア・イプシロンとクライスラー・イプシロンを比べてみると,違いはエンブレムだけなのが良く分かると思います。
時々,フロントグリルがクライスラーの他の車と通じるなどとコメントしている人がいますが,このグリルのデザインはクライスラーとは何の関係もありません。
あくまでもランチアのデザインなんです。
↓こちらがランチア・イプシロンです。エンブレム以外同じでしょ?だって,同じ車なんですもん(笑)
イプシロンは車としては,フィアット500のツインエアとほとんど同じです。
エンジンもミッションも一緒です。
インタークーラーターボが付いた,360度クランクのツインエンジンです。
レシプロエンジンの中でも,ツインエンジンは色んなバリエーションがあります。
直列ツイン,Vツイン,水平対向ツインなどがありますが,直列ツインには更に色んなバリエーションがあります。
皆さんがイメージするツインエンジンはこんな感じでしょうか?
180度クランクのツインエンジンです。
エンジンには4サイクルエンジンと2サイクルエンジンがあって,現在主流の4サイクルエンジンは,吸気,圧縮,爆発,排気という4つの工程をピストン2往復で行ないます。
この図では省略されていますが,吸気用のバルブと排気用のバルブが付いていて,それらが開いたり閉まったりします。
このバルブが吸気用2個と排気用2個の1気筒当たり4つ付いているエンジンを4バルブと言います。
バルブを開け閉めするためにカムというおにぎりみたいな形をしたものを使うのですが,このカムが吸気用と排気用に別々に2つあるエンジンをツインカムと言います。
良く目にするDOHCというのは,ダブル・オーバー・ヘッド・カムの略で,まぁツインカムと同じことなんですが,ちょっとカッコ良く聞こえます。(笑)
ちなみに,2サイクルエンジンは,吸気,圧縮,爆発,排気の4つの工程をピストン1往復で行なうので,理論上は4サイクルエンジンの倍のパワーを出せます。
ただ,バルブではなく,ポートという開きっぱなしの穴で吸気と排気を行なうので,どうしても燃焼していない混合気が排気ポートから排出されてしまうことと,潤滑のためのオイルを一緒に燃焼させるので,排気ガスがクリーンにできない構造で,ほぼ消滅してしまいました。
(2サイクル好きの私としては,とっても残念です。)
で,ツインエアのエンジンなのですが…。
このような動き方をします。
このツインエンジンを,360度クランクと言います。
180度クランクと360度クランクにはそれぞれにメリットとデメリットがあって,どちらが良いとは一概には言えませんが,動き方をよーく見ていると分かると思うのですが,360度クランクの方が味わいがあるエンジンになるのですよ,お兄さん!(270度クランクもありますが,話が長くなるので割愛します。)(既にそうとう長くなってる?)(笑)
バイクの世界だと,ヤマハのSRなど,シングルエンジンに根強い人気があって,その味わいと鼓動感が好きという人がいますが,360度クランクのツインエンジン,良く見ると,シングルエンジンが二つ並んでいるような作りじゃありませんか?
そうなんです,独特の味と鼓動感のあるエンジンなんです。
具体的には,口ではうまく説明できないんですが,ポコポコ…という感じのエンジン音です。
(パラララ…と言った方が正確かな?)
フィアット500でもイプシロンでも,マフラーを替えている車を見たら,是非エンジン音を聞いてみてください。
駐車場で一緒になったら,「エンジン音聞かせてください。」とお願いしてみてください。(車好きなら嫌と言わないと思いますので…。むしろ喜ぶと思います…。)
ノーマルよりもエンジンのビート感が分かると思います。
特に,フィアット500の可愛いキャラクターにはこのエンジンはとっても合ってますね。
イプシロンでは,さすがに高級なイメージに合わせて遮音が効いていて,車内は静かでエンジン音があまり聞こえないんですが,外で聞くと独特の鼓動が分かります。
…で,肝心のパワーはどうなのよ?と思われるかもしれませんが,インタークーラーターボですので,必要十分なパワーとトルクです。
まぁ,マックスパワー85PSですので,もの凄く速いという訳ではありませんが,「ケイターハム・スーパーセブン」にも書いたように,使い切れるパワーを使い切る楽しさを味わえますよ。
独特の加速感はとっても気持ち良く,楽しいです!
(メーカー公表の最高速度は175Km/h)
(燃費は19.3Km/l)←本当にこのくらいいきます!
フィアット・パンダやアルファロメオ・ミトにも積まれているエンジンですので,フィアットグループはこのエンジンをかなり高く評価しているんですね。
世界中の車好きを驚喜させた超個性的なエンジンを,是非一度味わってください。
エンジンの話がめっちゃ長くなりましたので,そろそろその他の話題に移ります。(汗)
イプシロン,この角度からのデザインが秀逸です。
リヤフェンダーからCピラーへの流れるようなライン,日本車では絶対ないデザインですよね。
イタリアならではです。(作っているのはフィアット500と同じポーランドですが…。)(汗)
「ダサカッコ良い!」にも書きましたが,イタリア人のデザインセンスは独特というか,カッコ良さとカッコ悪さをよーく分かっていて,フェラーリやランボルギーニみたいにとんがったカッコ良い車も作りますが,なんとなくぼてっとしているのに妙に魅力的だったり,一見カッコ良くないんだけど見れば見るほど味わい深くて忘れられなくなったり,「やられた!」って感じのデザインが多いんです。
イプシロンもそんな感じの不思議なデザインですね。
よく見ていただけると分かると思いますが,この車は5ドアです。
リヤドアのノブがリヤサイドガラスの後ろの所にブラックアウトされて隠されています。
同じフィアットグループのアルファロメオなんかでもこのデザインが多くて,一見3ドアに見えるんですが,実は5ドアという,デザインと利便性を両立させた作りになっています。
最近,日本車でもこの真似をしている車がありますね。
それにしても,このテールランプのデザイン,これもイタリアならではですね!美しいです。
3代目イプシロンも,やはり小さな高級車として作られていることが良く分かると思います。
内装のデザインと色合いも,小さな高級車感満点です!
チョコレート色のアルカンターラのシートが素敵です。
トランクも十分広いです。
全長3835㎜×全幅1675㎜と,とてもちっちゃいボディなのに,バックソナーまで付いていますので,奥様でも運転は安心です。
そもそも,新車の販売ターゲットはある程度の人生経験のある女性だったようですね。
ほんと何度も言うようですが,クライスラーでなくてランチアだったら売れたと思うんですけど…。
メーターはセンターメーターです。
左ハンドルが基本なので,スピードメーターが左側にあって,右ハンドルの運転席からはやけに遠いんですが,あまり見ないからまぁ良いかぁ?(爆)
今時の車には珍しく,ちゃんと水温計が付いているのは,おやじとしては嬉しいです。
この車,アイドリングストップが付いているんですよ!
フィアットでは,スタート&ストップシステムと呼びます。
停止して間もなく,このようにストンとエンジンが停止します。
最初はちょっと焦りますが,1AUTOの表示の下に,スタート&ストップシステムが機能していることを示すマークが表示されますので安心です。
で,ブレーキから足を放した瞬間,セルが回ってエンジン始動,アクセルを踏むとスタートします。(当然なんですが,なぜか感動!)(笑)
どうしても嫌な人はスタート&ストップシステムをスイッチでOFFにすることもできます。
このメーターナセル,下に格納できそうなデザインですが,格納はできません。(笑)
その代わり,こんな間接照明が点いて,おっしゃれ~! なんですよ。
イプシロンのミッションは,2ペダル5速マニュアルです。
ヨーロッパの小型車はこの手のミッションが多いですね。
フィアットグループが得意中の得意とするミッションですので,安心です。
フィアットではデュアロジックと呼びますが,ランチアではDFN(Dolce Far Nienta)(なんと,「何もしなくても良い甘美さ」という意味!),クライスラーではデュアルファンクションと呼びます。
全部同じものです。
AUTOモードにしておくと,まさに何もしなくても良い甘美さを味わえますが,マニュアルモードにして積極的にシフトすると,マニュアルミッションのような運転の楽しさ,車と一体になって走る喜びを味わえます。
前述の個性的なエンジンと,このミッション,そして1,090Kgの小さなボディの相性はばっちりで,乗ると楽しい楽しい…。
運転そのものを楽しめる希少な車の1台です。
アルファロメオだとセレスピードも良いですが,やっぱりマニュアルミッションに乗りたくなってしまうんですが,イプシロンの場合は,3ペダルマニュアルでなくても,DFNがちょうど良い塩梅というか,落としどころって感じで満足度高いんですよね。
不思議ですが…。
実はこの手のミッションの中で,フィアットグループとBMWだけが,引いてアップ押してダウンなんです。
他のメーカーとは逆なんですが,この方が人間の感覚に合っているというか,自然な感じがします。
加速している時は体がシートバックに押し付けられる方向に力がかかるのですから,そこでシフトレバーを押すのは不自然な動きになるのです。
シートバックに体が押し付けられるほどの急加速はそうそうしませんけどね…。
上り坂ではヒルアシストシステムが機能しますので,ご安心ください。サイドブレーキを引かなくても大丈夫です。
クライスラーのイプシロン,ランチアじゃないことを嘆く方も多いかもしれませんが,考えてみたら,日本とイギリスでしか乗れないんですから,世界レベルで見たら超レアな車じゃないですかぁ?
しかも日本では2年しか輸入されなかった希少車!(別名不人気車とも言う…。)(爆)(汗)
ランチア仕様にはせず,このまま乗ることを強くお勧めします!
いつも通り,走行33,000Kmちょっとで艶々ピカピカの超極上車です。
もちろん不具合など一切ない,調子の良い絶好調な車です。
スタート&ストップシステムの様子です。
iPhone片手に撮影しているので,画像が揺れますが,ご了承ください。(汗)
やっぱり動画だとポコポコ…という感じは伝わらないですね。
こちらは現行型のランチア・デルタです。
イプシロンを大きくして平べったくしたみたいなデザインですね。
(イプシロンの方がデルタをちっちゃくしたデザインなんだと思いますが…。)
デルタの実車を見ると,お洒落で素敵で,おぉ!と声が出てしまいますよ。
ステアリングや室内のデザインもイプシロンと同じ雰囲気ですね。
このエンブレムですよ!
これが付いていれば…。(笑)
フロアマット新調しました
色はダークブラウンです。
ブラックのフロアマットがなんかダサいなぁと思っていたんですよ。
チョコレート色のアルカンターラのシートとの相性もばっちりです。
ここにもクライスラーのエンブレムが燦然と輝いています。…(-_-;)
うーん,良い感じですね。